音楽評論家 奥田佳道さんによるプログラムノート

音楽評論家の奥田佳道さんが、第27回チャリティコンサート「サロン楽の極み」のプログラムノートを書いて下さいました。奥田さんならではの、深すぎる解説です。

これを読めば、コンサートをもっと楽しめること間違いなしです!

↓全曲の解説はこちらをダウンロードしてお読みください↓

↓以下、プログラムノートより抜粋↓

モーツァルト(1756~1791)きらきら星変奏曲 ハ長調 K.265

 このメロディを知らぬ者はいない。「きらきら星」の童謡としても「ABCの歌」としても。

オリジナルは、モーツァルトの時代、パリで親しまれていたシャンソン「ああ、お母さん、あなたに申しましょう(ああ、ママに言うわ)」。作者不詳ながら1770年代から歌われていたようである。恋人を想う心を、娘が母親に打ち明ける歌だ。

モーツァルトはウィーンを拠点とするようになった1781年頃に、この微笑ましいメロディを用い、12の変奏曲を書く。ピアノ学習者(モーツァルトのお弟子さん)の上級エチュードとして作曲したのか、予約演奏会での自作自演を考えていたのか、例によって創作の背景は良くわかっていない。

 華やぎも戯(たわむ)れも、変幻する調べも素晴らしい。これぞアマデウスの世界。

シューベルト(1797~1828)ピアノ五重奏曲 イ長調 「ます」 D.667 Op.114

 音楽交流NPOクウォーター・グッド・オフィスと深い絆で結ばれているトップ・アーティストが勢揃い。まさに<サロン楽の極み>だ。顔ぶれも曲目も。

音楽の都ウィーンに生まれ育った希代の旋律「作家」フランツ・ペーター・シューベルトは1819年夏、22歳のときに旅先で知人のリクエストに応じ、ピアノと弦楽のための五重奏曲を書く。

弦楽四重奏とピアノによる五重奏曲ではなく、低音の要コントラバスを交えた五重奏は異彩を放つものの、実は19世紀初頭のサロンや家庭音楽会では人気の演奏スタイルだった。

ベートーヴェンとほぼ同世代の作曲家でピアニストとしても知られたフンメル(1778~1837 現在のスロヴァキアの首都ブラティスラヴァ出身)も、コントラバスを交えた五重奏曲を作曲または編曲している。シューベルトの「ます」は、さてフンメルの五重奏曲を得意としていたアンサンブルのために書かれたか。

楽章は全部で5つ。第4楽章が、自作の歌曲「ます Die Forelle  英語名:The Trout」(1817年作曲)の主題に基づく変奏曲となっている。

歌に満ちあふれた創りは申すに及ばず、大胆極まりない転調と変奏の筆致を愛でたシューベルトに魅了される。終わりそうで終わらない執拗なフレーズ(失礼!)や回想、ハンガリー風の躍動するロンドもこの作曲家の美質となる。彼は、ウィーン城壁の内外で演奏されていた舞曲や東欧の音楽が好きだったのである。

恒例の初夏のチャリティ。対話・交歓の美学に酔いしれたい!

第1楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ

第2楽章:アンダンテ

第3楽章:スケルツォ、プレスト

第4楽章:主題と変奏、アンダンティーノ~アレグレット

第5楽章:アレグロ・ジュスト(正確なアレグロで)

音楽評論家 奥田 佳道

 

東京生まれ。ヴァイオリンを学ぶ。ドイツ文学、西洋音楽史を専攻。ウィーンに留学。NHK、日本テレビなどの音楽番組に解説者として出演するほか、音楽祭の企画、雑誌・演奏会ブックレットへの寄稿、コンサートプレトークなど多方面で活躍。